清水義範の洞察力
パスティーシュ小説作家の清水義範が、20年ほど前、今どきの教育を考えるヒントというエッセイを講談社から出しました。そのつかみの話が、とても印象に残っています。
教育の現場は、学校だけではなく、普通に生活していれば、あなたは教育を受けていたり、教育をしているのです、という趣旨の話でした。
例として清水義範が挙げたのは、東京は4月になると歩きづらいけれども、夏や秋には歩きやすくなる、という現象です。これは、単に感覚的なものではなく、根拠があるのです。4月は、新社会人がデビューする時期です。新社会人は、東京の混雑に慣れていません。だから、新社会人は、人とぶつかりかけたり通路を塞いでしまったりするのです。しかし、何ヶ月かすると、新社会人は、混雑の中スイスイと歩く技を身につける。だから、周りの人が歩きやすくなる、という分析でした。